「9尺の町家SOHO」ノミチ

  • 板張りの外観と、大好物について write 明石 博之

    どうですか!それっぽい外観になったと思いませんか?!このまちに似合うのは、漆喰塗りか下見板の壁だと思います。柿渋のムラ感が経年変化した板のように見えて、なかなかナイスな仕上げです。カタチになって見えてきたので、最近では、この建物の前に立って、ボーっと眺めている方をよく見かけます。その気持ち、わかります。間口9尺の建物に、わざわざ手を入れて、また使おうと誰が思いますか。

    二階のオフィス部分の空間ですが、当初計画では、屋根裏が見えるように吹き抜けにする予定でした。暑さ寒さが厳しかろうと、可動天井など色々考えてみましたが、結局コストがかかってしまうため、天井を張ることに。しかし、この年季が入った梁をどうしても見せたい!という思いから、天井を梁の上まで持っていくことにしました。その梁だって、水平直角に走っているわけもなく、これまた大変な作業なんだと思います。軒桁のボックスは、配管スペースとなります。

    歴史的建築物の活用でお世話になっている先生方がこれを見ると「えー、合板の大壁なのー?!」と驚かれるかもしれません。でも、大壁にして付け柱にすると、壁の中に筋交いバンバン入れてしまうより、揺れたときの柔軟性があるのか?と思いましたが、いかがなものでしょうか。いざとなれば、元に戻せる「可逆性」もありです。

    で、どうしても壁のなかに収まりたくない柱がいます。こいつらです。建物が傾いているため、柱の足元が出たり、逆サイドの柱の頭が出たりと、垂直な壁には入りきらないわけなんです。こうゆうのは、マチザイノオト的に大好物と言えます。古い建物が、水平垂直の定規を当てられても、なお抵抗している感じ、愛くるしいです。…って、こういうことに共感してくださる方っているのでしょうか。

    またもや大好物を発見しました!!壁の中に大きなイモムシが入っているので注意してください!!と説明しています。危ないです!…じゃなくて、正しくは「この裏のパイプスペースに換気扇のダクトが通っています、気を付けて!」という意味です。

    わ、またまた発見!!壁にビスを打って、簡易の下履き掛けになっています。こういう現場の工夫(アイデア)がたまりません。となみ野建築さん、めちゃくちゃ几帳面で、いつも現場がキレイ。素晴らしいです。でも、こんなことばかりをマチザイノオトに書いてしまって、すみません。

    これから毎回お伝えしますが、このオフィスを借りてみたいという方がいましたら、マチザイノオトのfacebookページにメッセージを下さい。興味があるけど、オフィスが完成してから考えるー、という方もぜひ早めにご検討ください。不動産情報に一般流通させてしまうと、あっという間に借り手がつくという自信があります♬


  • こだわりの匠、かちわりの氷 write 明石 博之

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    二階のオフィス部分です。

    あれ…、マチザイノオトさんも、大壁でいいっんすか?! っていう声が聞こえてきそうですが、これには訳があるんす!
    今回、施工をお願いしている、大工のとなみ野建築さんからの提案で「つけばしら」というやり方を、やってみることにしました。この建物は、貫の入った歴とした木造伝統工法です。ところが、土が塗り込んでなくて、最初にあった石膏ボードを解体してみると、お隣との間には何もありません。まぁ、まぁ、それでも、一階はガレージなので、それはそれで良いのです。断熱材を入れる必要もありませんから、既存の柱を活かして、壁も合板を貼り直したうえで、珪藻土を塗ります。これで十分です。

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    上の写真は、一階部分です。柱は隠さず、真壁の造りで、このあとにプラスターボードを張って、珪藻土を塗ります。
    きれいに直線の溝を掘っているのは配管屋さん。ここに新しく下水道の配管を通すため、丁寧にコンクリ土間を剥がしてくれています。狭いガレージに小さな重機が作業している様子、なんだが、面白い光景です。すごく丁寧な仕事に驚きました!

    ちなみに、こういった倉庫(住居ではなかった用途)には下水の公共マスが、建物前の道路に埋設されていません。新たに下水を使う場合は、市役所に依頼をして公共工事をしてもらう必要があります。もし、都市計画で公共下水道を整備することになっている場所であれば、その工事は市役所が負担します。この建物は、対象になっていたので助かりました。施主さんの負担は、建物敷地内へ敷いてもらった下水道マスから先の工事部分のみとなります。

    それと、柱と天井を支えている根太をつないでいる補強を「方杖(ほうづえ)」と言います。もともと図面にはなかったのですが、大工さんのこだわりです。町家と言えども、お隣さんに寄りかかっているようじゃダメ!建物単体でしっかり建ってないと、というコンセプトで補強してくださいました。きっとお値段以上の仕事のはずです。補強の位置は、ハイエースが入るくらい、という設定です。

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    二階のオフィス空間は壁の中に断熱材を入れることにしました。お隣の建物との隙間が十分ではないため、柱の厚みいっぱいの空間を使い、その上に合板を貼ります。そしてさらに、もともと柱のあった場所に、厚みが通常より半分くらいの柱を「つける」のです。壁を珪藻土で塗ってしまえば、後からつけた柱だとは思われません。

    実はこの方法は、フツーに、昔からあるやり方なんだそうです。ずるい方法のように思えますが、社寺建築でも使われる方法なんだそうです。この事実、密かにショックでしたが、考えてみれば、見えないけれども利用されるものがあっても良いのです。こうやって大工さんと話をしながら工事を進めていくのは、貴重な経験です。やっぱり、図面ありきじゃダメだし、かといって、全体像のイメージを関係者が共有するためには図面が大事。多分ですね、こうやって工事を進めると、絶対に悪意のある違法建築などは生まれないと思うのです。

    こうしてマチザイノオトで、工事の途中を撮影して紹介するのは、完成してしまえば丁寧な仕事の跡が見えなくなってしまう。逆に、雑な仕事の跡が見えなくなってしまうことが残念だと思うからです。

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    写真は天井を見上げているアングルです。斜めの部材は「火打ち(ひうち)」と言いますが、建物が水平方向にねじれないための補強です。フツーは、建物の角っこ、梁とケタが直角に交わる部分につけますが、このように梁の両側を補強しているのは珍しいです。補強をやりすぎると、建物を固める方向にいきます。大きな地震があったときは、補強した部分にテンションが集中することで、その周辺から壊れてしまうことが心配されます。しかしこの工事では、二階の天井裏の筋交いも含めて、補強をしたところを見てみると、適度に力が逃げるくらいのつけ方をしているのが分かります。つまり、経年による自然な傾きの抑えになるようになっているということです。大工さん、さすがです。

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    そして、ここは1階の道路に面した柱です。さらっと伝統工法の継手をつくって補修してくれていますが、ここは手刻みの大工がやった仕事やで!という看板になります。「金輪継ぎ」という方法で、伝統工法には、こういった継手の種類が無数にあるんです。チョー、カッコいいです。もちろん、この柱は通りから見えるようにしておきます。

    この物件ですが、今年、2017年の春から入居する方を募集します。まだまだ完成イメージが湧かないと思いますが、興味のある方がおりましたら、マチザイノオトのFacebookページまで、ご連絡ください。この場所は、富山県射水市の新湊地区にあります。

    あ、そうだ!かちわりの氷の話をしていませんでした!北陸地方は、この数日間、大雪だったんです。しかも氷点下で寒い!駐車場に長時間放置したクルマのドアが開かない!完全に凍り付いてしまい、無理やり開けると塗装が剥げてしまうんじゃないかと心配です。そこで、プラスチックのヘラで、ドアの境目の部分についた氷をひたすらカチカチと割りました。雪は問題ないんですが、凍るのは勘弁です…。


  • ある意味、新しい挑戦です write 明石 博之

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    今回のマチザイノオト、準備にかなりの時間をいただきました。ある意味、新しい挑戦だからです。
    今までの建物は、住宅や店舗として、ある程度の基盤整備をしているタイプの建物なのです。こんな当たり前のことですが、その「意味」が本質的に、よくわかっていませんでした。ここは認めます!!

    この建物は、基本的に倉庫としての造りですから、配管、配線などは必要最低限のことしかしていません。じゃ、新築の家に、新設するみたいなもんじゃん!…というわけにもいきません。つまり、その中間的な、もっとも面倒な作業と位置付けられるのです。しょ、職人さん、ごめんなさい!
    この件については、またあらためて、別の回で書きます。

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    仕切り直して、小さな「オフィスづくり」DIY中、、、相変わらず、ゆるゆるい文字が得意な西田の看板、使いまわしで定番化しました。内川DIY部隊が結成され、どんどんメンバーも増えてきました。今回は、富山県立大の学生さんで、地域づくりの研究をしているグループの4人が協力してくれました。そしてなんと、今回は自衛官の若者が2名!!頼もしいっす。

    この現場の第1回目は、荷物の片付け、そして、壁の解体です。処分する荷物、けっこーあります。実はわたくし、タイヤを運んでいて、3年ぶりにやってしまいました。例のあれです、ギックリです。2年前からひねり体操を続けて、腰の調子が良くなり、すっかり気を抜いていました。ここ1ヶ月、さぼってしまった罰です。

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    ということで、もう座ることができません。ギックリ腰って、じわーっと時間が経つと痛くなるんですよね。今日は、だまし、だまし、なんとかやり過ごしました。途中、いつものメンバーが、さっと来て1時間くらい手伝ってくれて、さっと帰っていったり、差し入れ持ってきてくれて、様子見て帰ったり、なんだかんだと賑やかな1日でした。

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    荷物は1階に運んで、あとはハイエースに積むだけの状態に。それから、いよいよ壁の解体です。ここから事件が起きました。この辺りの町家は、隣とぴったりとくっついているため、ちょっとした振動が命取り!それなりに気を使って、あまり派手にガンガンと音を立てないようにしたつもりですが、作業をはじめて、すぐに両隣の方がやってきました。「もうちょっと静かに、そっとやってくれないか!」と注意を受けました。予想以上にお隣の壁にダメージがあるようです。バールでトントンとこちらの壁を叩くと、想像以上に響くそうなのです。

    せっかく手伝いに来てくれた皆にも、神経使うような作業をさせてしまい、大変申し訳ない気持ちですが、やはり、お隣さんのことが第一です。その後、どうやったら、響かずにできるか、色々と工夫をしました。

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    そこへ救世主が…。なんと、お隣さんの息子さんが、解体の仕事をされていたようで、様子を見に来たついでに、壁の壊し方をレクチャーしてくださいました。バールの先端で、グリグリと穴を空け、そこに曲がったほうの先端をツッコミ、ぐいぐい、手前に引っ張る、すると、ある程度の塊の壁がゴソッと外れます。おーっと、歓声があがり、希望の光が差し込んできたのが見えました♫

    それから、その応用編として、さらに色々な方法を編み出し、完全攻略法を確率しました。もう、振動もなく、作業的にもスピードアップしました。隣のお兄さん、ありがとう!

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    壁の大半は、その日のうちに壊すことができました。あとは、解体した壁の処分です。あと、ゴミもいっぱいある。ハイエースのピストンで、いったい何往復するのか?!では、皆さん、お疲れ様でした。これに懲りずにまた来てください。今日は、とにかく、まったく役に立たないわたしでした。