「外国人オーナー、橋のたもとにBARオープン」ノミチ

  • 内装解体が終わり、見積りという段になって… write 明石 博之

    こちら、外国人オーナーの住居兼バーになる町家。内装解体が終わった現場です。
    今回も施主であるスティーブンさんは登場しません!!

    多分、この町家の建設当時からあるであろう、束石(天然免震装置?)の写真から。床下の土はカラッとしていて、石にも柱にもほとんど湿気はありません。

    突然ですが、最近の建築コストの高騰には、驚きを隠せません。感覚的にですが、2013年にオープンしたuchikawa六角堂のリノベ工事の金額と比べて、今はその1.5倍くらいじゃないかと思います。なぜ高くなっているかは単純な話で、需要に対して供給が追いついてないからです。

    東京オリンピック関連の建設で、全国の職人さんが東京に取られている、などという話をよく聞きますが、これは一時的なことではなさそうですよ。どこに行っても、業界の誰に聞いても慢性的な人手不足。80歳を過ぎて働いていた職人さんたちが、いよいよ引退の時期を迎えて、建設業界を支える人たちが年々少なくなっています。

    古民家のリノベーションの工事は面倒ですし、不測の事態に対応すべく、多少は余裕を見た見積りになってしまいがちです。慣れていないとなおさらです。

    今回、見積りを複数社にお願いしましたが、予算内に収まらなかったり、手に負えないとお断りがあったりで、なかなか着工することができませんでした。で、最終的には、これまでマチザイノオトの2つのプロジェクトでご一緒した、藤井工業さんにお願いすることになりました。予算面に加えて、熱心かつ丁寧に対応してくれる姿に、スティーブンさんも安心したようです。

    左にいるのが藤井社長。マチザイノオトに何度か登場しています。ここは中庭から母屋側を眺めた場所で、お二人がいる場所が、洗面&シャワールームになるところです。

    その上にある梁が、ちょっとヤバいところで、以前の「やっつけリフォーム」のせいで、強度が弱くなっています。ちなみに、内装解体を先にやってしまうのは、設計と工事見積りの精度を上げるためです。多少は二度手間のコストがかかりますが、それを上回るメリットがあります。もちろんコスト的にも。

    こちらはバーのトイレになる場所から見た中庭の様子です。

    右にある大きな灯篭は残して、何かいい感じの照明に使えないかと思っています。庭の木は数本だけ残し、あとはバッサリと切ってしまいます。大量のエアコン室外機がここに並ぶので、スペースの確保が必要です。

    スティーブンさん、「亀が泳ぐ池が欲しい」と言っていたような気がしますが、ちょっと難しいかもしれませんね。そういえば、猫ちゃんは飼うみたいです。

    建築家の山川氏夫妻(コラレアルチザンジャパン)、それから工事関係者の皆さんが現場で打合せ中。

    この写真は、母屋の玄関を入って、まっすぐ内川まで抜けた通路を見ている風景です。この通路に置いてある束石がコンクリブロックになっているところを見ると、もともと土間だった場所に床を張ったんだと思われます。私たちのオフィス、ma.ba.lab.よりも半間(約900mm)間口が広いだけで、随分と空間の見え方の印象が違うもんだなーと思います。

    この窓の先は内川です。ここがバーになる空間で、写真を撮ったこの位置がバーカウンターの内側になります。スティーブンさんたちは、営業が始まったら、多くのお客さんをここでお迎えすることになります。内川に向かって、段々と低くなっている地形です。

    もともと土蔵があった場所ですが、前のオーナーさんの時代に土蔵は解体してしまったので、今はその建屋だけが残っているという状態です。その先に見える中二階のようなフロアが作業小屋だった場所です。この地域では「番屋」と呼んでいます。

    バーの入り口は左手です。右手には、中二階のフロアに続く階段をつくる予定です。そこからさらに二階へ続く階段が付きます。多分、文章で説明してもわからないと思いますが、とっても不思議な空間になります。構造的には随分と補強が必要な場所です。もともとあった貫(複数の柱の溝を貫通しながら壁の中を横断している細長い板材)は抜かれていますし、壁も壊されています。

    右手が内川です。正面に見える壁はお隣の敷地にある土蔵のしっくい壁です。そう、お隣さんの壁が見えるということは、こちら側の建物には壁がないということになります。壁は内装解体のときに壊したわけですが、貫がなくなっていることは、解体してみないとわからないことです。

    お隣さん、母屋の建物は壊してしまったのですが、内川に面した土蔵を残していることに感謝です。

    さて、この記事ですが、実は随分と投稿をサボってしまったせいで、現在の工事の様子とは異なります。現場はすでに基礎の工事が終わり、大工さんが入って粗々の間取りがわかるくらいの作業が進んでいます。内川側からも、表通りからも、中の工事の様子が見えますので、ご興味ある方は建物の外から工事の様子を見学してみてください。

    では、次こそは、スティーブンさんの登場になるでしょうか!?

  • スティーブン邸、オリジナルな状態にリセット write 明石 博之

    内装解体がはじまりました。ここにあった前のオーナーさんの荷物をすべて撤去し、いるものいらないものを選別。とりあえずは内装解体をお願いした業者さんの倉庫に預かってもらいました。(うちもデッカイ倉庫ほしい!)

    やっぱり出ました!隠されて見えなかった梁です。太い木材を井桁に組むことで、長細い町家の屋台骨として強靭な構造になっています。内川沿いの町家はだいたいこんな感じ。町家オフィスのma.ba.lab.もほぼほぼ似たような構造です。しかも間取まで。

    当初、この吹き抜け空間に階段をつくる予定でしたが、この状態では無理ですね…。仕方ないので、別の導線を考えることになりました。

    余談ですが、この竹で組んだ下地窓が、最近とってもカッコよく思えてきました。もちろん、伝統的なデザインはもともと好きなのですが、ぐるぐる二周回って新しいというか、洗練されたデザインで、オシャレに見えてきます。その向こうに見える玄関から入ってくる光がキレイです。冬の北陸では貴重な晴れの日。わたし、解体現場で癒される変人です。

    中庭に積もった雪はなかなか融けません。町家のリノベの場合、雪のことを計算に入れて、中庭の排水や窓の造りを考えなければ、後々大変なことになります。空き家になって久しい物件のほとんどは、中庭周辺からヤラレテいます。だから、ひと冬ひと冬、空き家は痛んで来るのです。

    しかし、スティーブン邸は広いですねー。ma.ba.lab.の間口が2軒半(約4,500mm)に対して、こちらは3軒(約5,400mm)です。この半軒の差はデカいです!

    床下もキレイ、壁が極端に劣化しているところもなく、傾きも想定内。通りに面した柱を入れ替える程度の補修で済むかなぁ?と思うのですが、まだまだ油断はできませぬ。総じて、とってもラッキーな状態ってことです。

    タイトルの「オリジナルな状態にリセット」とは、まさに今のような状態です。多くの町家が多かれ少なかれ、昭和40年代以降にリフォームをしています。洋風のデザインや生活スタイルを取り入れるため、化粧や間取りを変えていくわけです。それで犠牲になった下地や柱によって、数十年後に家が傷んでしまうのです。そういったリフォームをする以前の状態に戻すことを、通称「オリジナルな状態にリセット」と言います。誰にも通じないので、注意してくださいね!

    以前にも紹介したこの窓ガラス。どこに流用しようか悩むところです。スティーブンさんは、とっても気に入ってるようです。中庭にある大きな灯篭を見せたい反面、このガラス越しにぼんやりと外の様子を感じることができるのも素敵です。

    こちらは、BARになる川側の建物の二階です。柱が立っているところに、もともと壁がありました。ブルーシートがあって、脚立がかかっている場所ですね。解体で壁を壊すまで、あっちとこっちでどれくらいの高低差があるかわかりませんでした。壁をやぶってみると結構な段差です。しかし、これを活かすのがリノベの楽しいところ。

    次回、いよいよスティーブンさんの登場です。まだ、ご本人に何の了解も得ておりません!!