スティーブン邸、オリジナルな状態にリセット

内装解体がはじまりました。ここにあった前のオーナーさんの荷物をすべて撤去し、いるものいらないものを選別。とりあえずは内装解体をお願いした業者さんの倉庫に預かってもらいました。(うちもデッカイ倉庫ほしい!)

やっぱり出ました!隠されて見えなかった梁です。太い木材を井桁に組むことで、長細い町家の屋台骨として強靭な構造になっています。内川沿いの町家はだいたいこんな感じ。町家オフィスのma.ba.lab.もほぼほぼ似たような構造です。しかも間取まで。

当初、この吹き抜け空間に階段をつくる予定でしたが、この状態では無理ですね…。仕方ないので、別の導線を考えることになりました。

余談ですが、この竹で組んだ下地窓が、最近とってもカッコよく思えてきました。もちろん、伝統的なデザインはもともと好きなのですが、ぐるぐる二周回って新しいというか、洗練されたデザインで、オシャレに見えてきます。その向こうに見える玄関から入ってくる光がキレイです。冬の北陸では貴重な晴れの日。わたし、解体現場で癒される変人です。

中庭に積もった雪はなかなか融けません。町家のリノベの場合、雪のことを計算に入れて、中庭の排水や窓の造りを考えなければ、後々大変なことになります。空き家になって久しい物件のほとんどは、中庭周辺からヤラレテいます。だから、ひと冬ひと冬、空き家は痛んで来るのです。

しかし、スティーブン邸は広いですねー。ma.ba.lab.の間口が2軒半(約4,500mm)に対して、こちらは3軒(約5,400mm)です。この半軒の差はデカいです!

床下もキレイ、壁が極端に劣化しているところもなく、傾きも想定内。通りに面した柱を入れ替える程度の補修で済むかなぁ?と思うのですが、まだまだ油断はできませぬ。総じて、とってもラッキーな状態ってことです。

タイトルの「オリジナルな状態にリセット」とは、まさに今のような状態です。多くの町家が多かれ少なかれ、昭和40年代以降にリフォームをしています。洋風のデザインや生活スタイルを取り入れるため、化粧や間取りを変えていくわけです。それで犠牲になった下地や柱によって、数十年後に家が傷んでしまうのです。そういったリフォームをする以前の状態に戻すことを、通称「オリジナルな状態にリセット」と言います。誰にも通じないので、注意してくださいね!

以前にも紹介したこの窓ガラス。どこに流用しようか悩むところです。スティーブンさんは、とっても気に入ってるようです。中庭にある大きな灯篭を見せたい反面、このガラス越しにぼんやりと外の様子を感じることができるのも素敵です。

こちらは、BARになる川側の建物の二階です。柱が立っているところに、もともと壁がありました。ブルーシートがあって、脚立がかかっている場所ですね。解体で壁を壊すまで、あっちとこっちでどれくらいの高低差があるかわかりませんでした。壁をやぶってみると結構な段差です。しかし、これを活かすのがリノベの楽しいところ。

次回、いよいよスティーブンさんの登場です。まだ、ご本人に何の了解も得ておりません!!


明石 博之

[組織] グリーンノートレーベル(株)
[役職] 代表取締役
[職業]場ヅクル・プロデューサー

1971年広島県尾道市(旧因島市)生まれ。多摩美術大学でプロダクトデザインを学ぶ。大学を卒業後、まちづくりコンサル会社に入社。全国各地を飛び回るうちに自らがローカルプレイヤーになることに憧れ、2010年に妻の故郷である富山県へ移住。漁師町で出会った古民家をカフェにリノベした経験をキッカケに秘密基地的な「場」をつくるおもしろさに目覚める。その後〈マチザイノオト〉プロジェクトを立ち上げ、まちの価値を拡大する「場」のプロデュース・空間デザインを仕事の軸として、富山のまちづくりに取り組んでいる。

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