鋳物づくり的、まちを楽しむ民家ホテル マチザイNo.14

  • 金屋町に力強い「点」が生まれる write 明石 博之

    2020年の秋、高岡市金屋町に誕生する「民家ホテル 金ノ三寸(かねのさんずん)」。

    コロナ禍における、建築現場のミーティングの様子です。一時は、ZOOMミーティングを利用しながら、極力集まる人数を減らし、なんとか現場を回してきました。

    国内でも、いつまた第二波がくるか予断を許さないので、しばらくの間はコロナ対策が必須。まさにウィズコロナ時代です。そうなると、建築現場にもデジタル革命が必要になってきます。

    こんなとき、建築現場で一番困るのは、「ここが、こんな風に…」と特定の場所に集まってもらって、その場所を皆で確認するような場面です。3密を避けながらの、こういったコミュニケーションは非常に困難を極めます。

    無理はせず、まずは、関係者の健康と安全が第一です。

    町家をリノベーションしたホテルですから、町家の特徴とも言える中庭の演出には知恵を絞りました。

    今の段階で、完成したときの雰囲気が少し見えてきたと思います。手前の部屋がダイニング、中庭を挟んで、奥の部屋がキッチンとなります。階段の見える場所が廊下ですが、中庭を取り巻くこれらの部屋が、中庭まで含んだ一体的な空間に見えてくるようにゾーニングしました。

    町家は、外の光を取り入れる場所が少ないため、建物全体が薄暗い空間になっています。その闇に、一撃を喰らわすような明るい光が差し込む場所が、この中庭です。町家のコントラストは、実に素晴らしい。

    こちらの「金ノ三寸」のオーナーである四津川社長は、鋳物製造メーカー「四津川製作所」を経営されています。四津川製作所のブランドの1つが「喜泉堂」です。こちらは、オフィスにあるギャラリーに並んでいるプロダクトです。製作段階に応じて、数々の職人さんたちが関り、1つの工芸品としての価値を持ちます。

    写真のなかに、段ボールの切れ端のようなものが並べられているのがわかりますか?これは、民家ホテル内に、喜泉堂の製品を展示するため、設計を担当している濱田修さんが、設置場所のサイズ感を検討するためにつくったものです。

    で、その検討の結果がこちらです。斜めに盛り上げた壁を造作し、その中央に展示箱を設置、ここに製品を置きます。それぞれの展示箱は、鉄や漆など、異なる素材でつくる予定です。

    四津川社長は、ゲストに泊まって頂く空間にあってこそ、手に取って見れる環境にあってこそ、製品の良さを実感できるのではないかと考えました。数十万円は下らない高額な製品ですが、お客様を信頼するしかありません。ガラスケースの中に納まっているのでは、四津川さんのコンセプトは、きっと伝わりません。

    ここはゲストをお招きする受付です。その真上に、こんなカタチの造作物をつくりました。これにある化粧をして、照明を埋め込み、完成します。トラディショナルなデザインと、ヘンテコな造形物という組み合わせは、驚くほどマッチします。それほど、伝統的な意匠の懐が深いということだと思います。

    伝統的な家屋は、思う存分遊んでいいと、私は思います。

    中庭に面したお隣の建物の壁です。あまりにも建物の躯体が痛いんでいたため、こちら側の工事で新しい塀を立てて、一見すると隣の建物の壁に見えるように造作をすることにしました。

    万が一、隣の建物が無くなっても、塀が独立して立っているという状況をつくることができます。これから少なくても10年は営業していくわけですから、何が起こるかわかりません。

    隣り合った2棟がつながった宿ですから、こんな場所ができてしまいました。あちらと、こちらとで、2階の床の高さが違いますが、どうしても、ここに収納とデスクに使える空間を取りたいと思う場所です。

    しかも、梁が邪魔になって、きちんとした空間をつくることができません。さて、どうする…。ひとまず、放置します。

    間もなく、外観の工事に入ります。アルミサッシを撤去、そして、さまのこ(千本格子)を復元、今よりも、よりトラディショナルなデザインに生まれ変わります。

    今年は、全国各地で大雨の影響による被害が出ています。ふと見上げた平凡な青空に、心から感謝したい気持ちになります。

    昔、10年に一度と言われた異常気象が、5年となり、隔年となり、いつか、毎年当たり前のように被害が出るようになるのかもしれません。しかも、コロナ禍においての避難で起こる「密」は、今後どう対処すれば良いのか、本当に悩ましいことです。