外国人オーナー、橋のたもとにBARオープン マチザイNo.10

  • Bridge Bar完成、新しいコトはじまる予感 write 明石 博之

    この方がスティーブンさんです。こちらは、町家の母屋の表玄関です。ここが、スティーブンさんの会社「しろくま興行」のオフィスとなります。そうです、ついに、町家をリノベーションした、バーと住居兼オフィスが完成しました!

    もしかすると、ご本人は不本意かもしれませんが、この表情が僕にとってのスティーブンさんのイメージで、思慮深く、相手を気遣う、優しい瞳が印象的な1枚が偶然撮れました。

    完成しました、と言っても、実際に完成したのは昨年の11月、そしてすでに12月にオープンしています。

    こちらが、バーの入り口側についたネオン看板。設置して点灯したときは、感動しました。だって、内川にバーができたんですよ! 僕はこの瞬間、ひとりで泣いてしまいました。そして、スティーブンさんに心から感謝しました。ご本人は、ご自身の夢を実現したわけですが、僕にとっても、Brigde Barのオープンは、待ちに待った「場」なのです。

    対岸から見るとこんな感じです。水面に映る明かりが素敵です。

    はじめて内川に来て以来、このまちに魅力され、今も変わらず大好きな風景なのですが、この感覚がわかる人がどれほどいるのか、自分の感覚のほうがおかしいのか、不安になった時期もありました。しかし、今はそう思いませんし、外国人であるスティーブンさんが、このまちを気に入ってくれて移住、開業してくれたのですから、この出来事は、僕に勇気をくれたのです。

    そういえば、右隣の土蔵建屋の壁も、最初に見たときは、Bridge Barのような錆びたチョコレート色の小波トタンでした。(改修してキレイな鋼板になってます)その隣に、こんな建物ができるなんて、誰が想像できたでしょう(笑)

    内川側のバーの入り口から入ってすぐ、風除室を兼ねた真っ赤な吹抜け通路があります。突き当りを左、そこからバーの中に入っていきます。目線より少し上に見える白い梁は、ちょっとした遊び心です。ぜひここに、スティーブンさん直筆で「Welcome」と書いてほしくて、そうしました。

    そしてバーの中です。古い建物のリノベーションの鉄則は、素材が無垢であることです。化粧材はどう頑張っても空間の存在に負けてしまいます。昔の梁柱をそのまま露出させて、新しい建材と上手く調和するようデザインされています。

    参考までに、<解体途中の様子>をご覧ください。設計を担当した、建築士の山川智嗣さん(コラレアルチザンジャパン)が、「この吹抜けと、中二階の空間を新築でつくろうと思ったら幾らかかることやら…」と言っていたことが印象的です。確かにそう思います。

    ここは内川側に面した、通称ライブラリーというコーナーです。落ち着いてグループで飲んでもらう場所で、スティーブンさんのお気に入りの場所です。

    Bridge Barのテーマからは日本伝統色の6色です。その1つがこの階段に塗装された江戸紫。伝統色なのに、こういった色を空間に使う日本人はあまりいませんね。インテリア家具は、僕のコーディネートですが、質感、色、形、空間との調和など、スティーブンさんのこだわりにより、いい意味で時間のかかった仕事でした。

    中央のテーブルは、色々な人が集い、交流が生まれることを期待して作ったコーナーです。天板は水辺をイメージして提案したステンレス板です。テーブルランプの明かりが天板に映りこむのを狙った仕掛けも施されています。

    ちなみに、施主であるスティーブンさんと、建築士の山川さんご夫妻、そして僕という、全員キャラの濃いの言いたい事をズケズケ言ってしまう人たちがどうやって、一緒に仕事をして、しかもこんなにいい空間が出来たか、未だにナゾですね…。あれ、あの案はやめたと思ったのに、無理やり押し通したな、、、とか、知らないうちに現場で決まったなとか、スティーブンさんの最終承諾を取らずに、デザインを決めてしまったりとか、おのおの色々と恐ろしいことをしたと思うのですが、結果的にはもの凄くいいコラボが出来たと思います。職人さんの意見、アイデアにも沢山助けられました。

    このアングルから見ると、建物の棟だったと思っていた場所が、異なる建物の境目だったというヘンテコリンな空間だったことがわかります。写真手前はもともと番屋と呼ばれる作業小屋だった建物。その奥はかつて土蔵があった建屋。この2つの建物の二階の高さが違うことを上手く利用して、階段でつながれた中二階のフロアをつくりました。これ、山川さんのグッドアイデアです。階段の取り回しが素敵。

    こちらがバーの奥座敷とも言える(いや、バーに奥座敷はないですが)くつろぎのコーナーです。中庭に面した二階の奥で、スペシャルな喫煙ルーム(部屋全体が江戸紫)が隣接してあります。デカいビンテージもののチェスターフィールドは、20年前のアメリカ製です。いい掘り出し物に出会いました。ランプ付きコーヒーテーブルも、偶然見つけたビンテージものです。

    後ろに見える「型ガラス」はもともとのサッシを再利用したもの、昭和レトロないい味が出ています。テーブルは、納品に2カ月以上かかったアルミ製のものです。リノベ空間のなかに置くと、無垢の素材が引き立ちますね。

    完成したバーを眺めるスティーブンさん。竣工式のときの様子です。これ、本当に不思議なんですが、外国人のスティーブンさんがこの空間に居ると、バーの中が華やかになるんですよね。というか、このバーの色調は西洋人のほうが似合う。江戸紫の階段、ベンガラ色の床の店など、日本人から決して発想できないでしょう。

    強引に押し切って、サプライズさせてしまった木毛セメント板の壁です。うっすらと白色を塗装、ゴールドに塗装したバーを目地に入れて、豪華さを演出しています。こういった仕上げは、古い梁や柱が見えている空間だからこそ引き立つデザインだと思います。

    これは、バーカウンターの木材の端材をモルタル床に埋め込んだものです。なかなかいい雰囲気になりました。

    施工担当の藤井社長と一緒に。オープンパーティーのときの様子です。藤井さんとタッグを組むのはこれで3回目です。お互いのクセも分かってきたかと思います。とても自然に、無理なく付き合えるパートナーです。スティーブンさん、嬉しそうです。

    Bridbe Barにもっとも近い山王橋。通称「手の橋」。ここから見え店の様子です。これからは、内川沿いにバーがあるのが日常の風景になると思うと、いやすでになっているんですが、みるたびに不思議な気持ちです。気を抜くと、本当にバーが出来たんだっけ??と信じられない一瞬もあったり。

    オープンしてから2か月が経ち、すっかり人気店になっています。夕方4時からオープンしていることもあって、たまに漁師さんの姿も。富山市方面からも飲みに来ているようです。僕にとっても、内川で自慢したい店ができたことで、色々な人にご紹介したり、一緒に飲みに行ったりと、楽しみが1つ増えました。

    最後に、タイトルのことについて、、、。

    新しいコトはじまる予感は、マチザイノオトとして、内川のまちづくりの次のフェイズが見えてきたということです。新しい仲間、スティーブンさん、そして一緒に移住してきてくれた藤井くん、彼らと一緒に、密度の濃い、充実した時間、夢をシェアして過ごしたいと思います。

    <ブリッジバー>

    〒934-0025 富山県射水市八幡町1-12-5
    TEL:090-8098-4690
    OPEN:16:00〜23:00 CLOSED:Monday(月曜日)
    駐車場4台あり
    ※山王橋のちかく、ネオン看板が目印

  • バーの内装、雰囲気が見えてきた! write 明石 博之

    グッドタイミングのときに現場に来ました。木材屋さんに頼んでいたパドックという木材を家具屋さんで加工してもらい、現場にトラックで運んできたというタイミングでした。銘木を扱う業者から買えば、うん十万円はする材ですが、全部がきれいに赤身になっていないことで、予算に収まる程度の金額で調達できました。少々の白木部分は、上手に塗装でカバーしてもらい、さらに設計担当の山川さつきさんのアイデアで、可愛らしいクサビで補修されていました!

    ブリッジバーには、中2階があります。ここから外の景色をガラス越しに眺めることができます。内川が一望できる良い席ですが、ちょうど、バーの真ん前に係留してあったプレジャーボートが沈没したまま放置されていて、景観的にはよろしくない状況で、とても残念です。

    内川を管理をしている富山県土木センターに問い合わせてみたところ、持ち主がまだ見つかっていないそうです。持ち主に警告するための看板を設置するとのこと。所有者ご本人が看板を見るかどうかはわかりませんが、とにかく、早くなんとかして欲しいものです・・・。

    先ほどの中2階フロアから、2階を見たときの光景です。なぜこうなっているかと言いますと、写真の手間と奥の空間は、それぞれが別の時期に建てられた建物で、しかも壁でふさがれていたため、解体してみるまで2階のレベルがわからなかったからです。でも、結果オーライ、面白い空間が出来上がりました。

    写真の左手、壁が斜めに切られている箇所が中2階へと続く階段を設置する場所です。この壁は、木毛セメント板と言われる建材です。もともとはセメント色をした板ですが、これに白色で薄っすらとペイントしてあります。この壁に真鍮のバーを見切り材のように走らせると、空間全体に上品さを演出できると思います。施主のスティーブンさんは、このデザインの提案を最初に聞いたとき、「え、大丈夫??」というようなリアクションをしたような気がしましたが、施工された場所を実際に見てみて、どう思ったでしょうか…。

    この写真は、3週間くらい前のもので、今は完成間近のところまで来ています。内川沿いに町家をリノベーションしたバーが出来る!!まもなくそれが現実のものとなります。六角堂をつくった頃には考えられなかったことです。

  • 内装解体が終わり、見積りという段になって… write 明石 博之

    こちら、外国人オーナーの住居兼バーになる町家。内装解体が終わった現場です。
    今回も施主であるスティーブンさんは登場しません!!

    多分、この町家の建設当時からあるであろう、束石(天然免震装置?)の写真から。床下の土はカラッとしていて、石にも柱にもほとんど湿気はありません。

    突然ですが、最近の建築コストの高騰には、驚きを隠せません。感覚的にですが、2013年にオープンしたuchikawa六角堂のリノベ工事の金額と比べて、今はその1.5倍くらいじゃないかと思います。なぜ高くなっているかは単純な話で、需要に対して供給が追いついてないからです。

    東京オリンピック関連の建設で、全国の職人さんが東京に取られている、などという話をよく聞きますが、これは一時的なことではなさそうですよ。どこに行っても、業界の誰に聞いても慢性的な人手不足。80歳を過ぎて働いていた職人さんたちが、いよいよ引退の時期を迎えて、建設業界を支える人たちが年々少なくなっています。

    古民家のリノベーションの工事は面倒ですし、不測の事態に対応すべく、多少は余裕を見た見積りになってしまいがちです。慣れていないとなおさらです。

    今回、見積りを複数社にお願いしましたが、予算内に収まらなかったり、手に負えないとお断りがあったりで、なかなか着工することができませんでした。で、最終的には、これまでマチザイノオトの2つのプロジェクトでご一緒した、藤井工業さんにお願いすることになりました。予算面に加えて、熱心かつ丁寧に対応してくれる姿に、スティーブンさんも安心したようです。

    左にいるのが藤井社長。マチザイノオトに何度か登場しています。ここは中庭から母屋側を眺めた場所で、お二人がいる場所が、洗面&シャワールームになるところです。

    その上にある梁が、ちょっとヤバいところで、以前の「やっつけリフォーム」のせいで、強度が弱くなっています。ちなみに、内装解体を先にやってしまうのは、設計と工事見積りの精度を上げるためです。多少は二度手間のコストがかかりますが、それを上回るメリットがあります。もちろんコスト的にも。

    こちらはバーのトイレになる場所から見た中庭の様子です。

    右にある大きな灯篭は残して、何かいい感じの照明に使えないかと思っています。庭の木は数本だけ残し、あとはバッサリと切ってしまいます。大量のエアコン室外機がここに並ぶので、スペースの確保が必要です。

    スティーブンさん、「亀が泳ぐ池が欲しい」と言っていたような気がしますが、ちょっと難しいかもしれませんね。そういえば、猫ちゃんは飼うみたいです。

    建築家の山川氏夫妻(コラレアルチザンジャパン)、それから工事関係者の皆さんが現場で打合せ中。

    この写真は、母屋の玄関を入って、まっすぐ内川まで抜けた通路を見ている風景です。この通路に置いてある束石がコンクリブロックになっているところを見ると、もともと土間だった場所に床を張ったんだと思われます。私たちのオフィス、ma.ba.lab.よりも半間(約900mm)間口が広いだけで、随分と空間の見え方の印象が違うもんだなーと思います。

    この窓の先は内川です。ここがバーになる空間で、写真を撮ったこの位置がバーカウンターの内側になります。スティーブンさんたちは、営業が始まったら、多くのお客さんをここでお迎えすることになります。内川に向かって、段々と低くなっている地形です。

    もともと土蔵があった場所ですが、前のオーナーさんの時代に土蔵は解体してしまったので、今はその建屋だけが残っているという状態です。その先に見える中二階のようなフロアが作業小屋だった場所です。この地域では「番屋」と呼んでいます。

    バーの入り口は左手です。右手には、中二階のフロアに続く階段をつくる予定です。そこからさらに二階へ続く階段が付きます。多分、文章で説明してもわからないと思いますが、とっても不思議な空間になります。構造的には随分と補強が必要な場所です。もともとあった貫(複数の柱の溝を貫通しながら壁の中を横断している細長い板材)は抜かれていますし、壁も壊されています。

    右手が内川です。正面に見える壁はお隣の敷地にある土蔵のしっくい壁です。そう、お隣さんの壁が見えるということは、こちら側の建物には壁がないということになります。壁は内装解体のときに壊したわけですが、貫がなくなっていることは、解体してみないとわからないことです。

    お隣さん、母屋の建物は壊してしまったのですが、内川に面した土蔵を残していることに感謝です。

    さて、この記事ですが、実は随分と投稿をサボってしまったせいで、現在の工事の様子とは異なります。現場はすでに基礎の工事が終わり、大工さんが入って粗々の間取りがわかるくらいの作業が進んでいます。内川側からも、表通りからも、中の工事の様子が見えますので、ご興味ある方は建物の外から工事の様子を見学してみてください。

    では、次こそは、スティーブンさんの登場になるでしょうか!?

  • スティーブン邸、オリジナルな状態にリセット write 明石 博之

    内装解体がはじまりました。ここにあった前のオーナーさんの荷物をすべて撤去し、いるものいらないものを選別。とりあえずは内装解体をお願いした業者さんの倉庫に預かってもらいました。(うちもデッカイ倉庫ほしい!)

    やっぱり出ました!隠されて見えなかった梁です。太い木材を井桁に組むことで、長細い町家の屋台骨として強靭な構造になっています。内川沿いの町家はだいたいこんな感じ。町家オフィスのma.ba.lab.もほぼほぼ似たような構造です。しかも間取まで。

    当初、この吹き抜け空間に階段をつくる予定でしたが、この状態では無理ですね…。仕方ないので、別の導線を考えることになりました。

    余談ですが、この竹で組んだ下地窓が、最近とってもカッコよく思えてきました。もちろん、伝統的なデザインはもともと好きなのですが、ぐるぐる二周回って新しいというか、洗練されたデザインで、オシャレに見えてきます。その向こうに見える玄関から入ってくる光がキレイです。冬の北陸では貴重な晴れの日。わたし、解体現場で癒される変人です。

    中庭に積もった雪はなかなか融けません。町家のリノベの場合、雪のことを計算に入れて、中庭の排水や窓の造りを考えなければ、後々大変なことになります。空き家になって久しい物件のほとんどは、中庭周辺からヤラレテいます。だから、ひと冬ひと冬、空き家は痛んで来るのです。

    しかし、スティーブン邸は広いですねー。ma.ba.lab.の間口が2軒半(約4,500mm)に対して、こちらは3軒(約5,400mm)です。この半軒の差はデカいです!

    床下もキレイ、壁が極端に劣化しているところもなく、傾きも想定内。通りに面した柱を入れ替える程度の補修で済むかなぁ?と思うのですが、まだまだ油断はできませぬ。総じて、とってもラッキーな状態ってことです。

    タイトルの「オリジナルな状態にリセット」とは、まさに今のような状態です。多くの町家が多かれ少なかれ、昭和40年代以降にリフォームをしています。洋風のデザインや生活スタイルを取り入れるため、化粧や間取りを変えていくわけです。それで犠牲になった下地や柱によって、数十年後に家が傷んでしまうのです。そういったリフォームをする以前の状態に戻すことを、通称「オリジナルな状態にリセット」と言います。誰にも通じないので、注意してくださいね!

    以前にも紹介したこの窓ガラス。どこに流用しようか悩むところです。スティーブンさんは、とっても気に入ってるようです。中庭にある大きな灯篭を見せたい反面、このガラス越しにぼんやりと外の様子を感じることができるのも素敵です。

    こちらは、BARになる川側の建物の二階です。柱が立っているところに、もともと壁がありました。ブルーシートがあって、脚立がかかっている場所ですね。解体で壁を壊すまで、あっちとこっちでどれくらいの高低差があるかわかりませんでした。壁をやぶってみると結構な段差です。しかし、これを活かすのがリノベの楽しいところ。

    次回、いよいよスティーブンさんの登場です。まだ、ご本人に何の了解も得ておりません!!