内川沿いのおきがえ処 マチザイNo.6

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内川に玄関がある町家

この町家には「やなせ洋品店」という表札がかけられています。表の通り、つまり商店街に面した側がお店の入り口で、内川に面した、こちら側が住まいの玄関となります。玄関を出れば、すぐにこの内川の風景が広がっているなんて、なんて贅沢な環境なんでしょう。
現在は空き家になっていますが、持ち主さんの親戚の方が、週に2回、二階の場所を借りて習字教室を開いておられ、プチ活用はされているようです。とにかく、木造の古い建物というのは、人が定期的に出入りをしていないと、すぐに痛んできます。ましてや、外壁をサイディングで囲って、アルミサッシを入れてしまえば、家が呼吸しづらくなってしまうため、風と水が建物のなかを循環しなくなります。

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外見よりも中身で楽しむ

内川に面した二間続きの和室です。外観の趣以上に、室内が贅沢な造りになっている、これが新湊の町家の特徴です。今でこそ、内川に面した窓は、後で造作されたと思われる倉庫でふさがれていますが、かつては、この部屋から内川を眺めることができたのでしょうね。
東京のマンション暮らしが長かった私にとって、人の行き来がある環境と暮らしが近いというだけで非日常を感じるのに、さらに部屋の窓の外に水辺があるという光景が、この上なく…、嬉しい!

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ここが窓の外を占有している倉庫です。ここをガツンと壊してみたい!という衝動にかられてしまいます。

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そして、町家らしい細長い廊下が続きます。こういった場所は、かつての通り土間だったと思うのですが、水周りが集中しているケースが多く、空き家になってしまったら、真っ先に痛んでしまう場所の1つです。

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洋品店のキオク

中庭を通り過ぎると、かつて洋品店を営んでいた店舗空間があります。昭和40年代ごろ、柱を表す木造伝統工法のお家をリフォームして、洋風の意匠にするのが流行りました。プリント合板で壁や床、天井を覆い隠して、窓にはアルミサッシを入れて、洋風の照明に入れ替える。それがまさに、こんな部屋なのです。お家が、工業製品化してしまうことを予感させた時代です。

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昭和レトロな雰囲気が満載の洋品店です。僕と同じ年代の方であれば、この扉、じいちゃん、ばあちゃんの家に行ったら必ず見かけた記憶がある残っているのではないでしょうか。このコンクリート土間のデザインも、昔、どこかの店で見た記憶があります。どこかは覚えていませんが、見たという記憶はあります。時代に覆い隠すインテリアが流行って、今はそれらを剥いで伝統工法の良さを見せるインテリアにしようとしている。面白いもんですね。

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ところで、おきがえどころ、って…

以前は、この部屋から中庭越しに、内川の風景が見えたんじゃないかと想像します。その風景を復活させたいなぁ…。
そういえば、タイトルの「おきがえどころ」について、まったく触れていないことに気づきました。ここは、新湊で貸衣装店を営む川口さんが主宰する、貸し着物のお店に生まれ変わる予定です。内川に訪れた方が着物に着替えて、内川の散歩を楽しんでもらう、という企画の拠点となります。今までは、着物に着替えて内川を散策するイベントを主宰されてきましたが、公民館を着替える場所に使ってきました。そしてこの度、町家のリノベーションとロゴなどのデザイン周りのプロデュースをグリーン・ノート・レーベル(地域交流センター企画)がさせて頂くことになりました。
内川に面した場所に、新しい店がオープンすると思うだけでワクワクします。そして、内川が賑わうキッカケを牽引する拠点になる予感がします。


明石 博之

明石 博之

[組織] (株)地域交流センター企画
[役職] 代表取締役
[職業]まちづくりコーディネーター

1971年広島県因島市(現尾道市)生まれ。多摩美術大学でプロダクトデザインを学ぶ。大学を卒業後、株式会社地域交流センター企画に入社。東京を拠点に、全国各地のまちづくりプロジェクトのコーディネーションを行う。2009年に同社の代表取締役に就任。2010年に妻の故郷である富山県へ移住した以降は、自らがまちづくりの主体者として、歴史的建築物などの地域資源を活用した社会的なしくみづくり、ソーシャルビジネスの事業化に力を入れる。

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