難ありつつも、工事は進んでます

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古民家の改修は、開けてビックリ玉手箱、の連続です。これを楽しんで設計、施工してくださる方でなければ、もう拷問以外のなにものでもありません。(玉手箱は私にとっての)
この写真は、右に蔵があって、蔵の建屋から続く増築部分を1階から仰いだところです。プチイベントやミーティングをするような開かれた空間になる計画です。構造は、現代的な建築に比べると大変頼りないように思います。しかし、今日まで80年も経過している建築だ、ということをよく考えてみてください。でも、見た目は確かに頼りないのですが…。

孫にも衣裳ならぬ、古建築にも化粧、という発想はそう好きではないのですが、建築的に内装をきちんと収めようと思えば、ある程度の化粧は必要になります。でも、基本は柱を表わす「真壁」にはこだわりたいですね。

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…こだわりたいですね、と言ったすぐあとに、昔の壁を覆い尽くしてしまう「大壁」の部屋です。ここはオフィスの中心機能となる事務作業スペースです。やはりここは、快適な空間を追求することにしました。こういった割り切りで良いんです。後の人がここをまた使う場合に、全部の壁を剥がして下されば、伝統工法の梁柱はしっかりと残ってますから。

こういった工事の醍醐味を例えるなら、感覚的には「古いもんと新しいもんが入り交ざっている空間を楽しむ」です。新築の工事で、わざわざ古い部材で組み立てる人はいません。築100年近くの年季の入った柱に、新しく塗り直した土壁が接している部分、あ~、これが萌えるんですね、私たちの世界に限っては。

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こちらは正面からの入口付近です。こちらの壁はご覧のとおり、土壁と竹木舞を落としてしまい、粗い木ずり壁のような下地をつくっています。あとはメタルラスに土壁です。随分と現代風な仕上だと思われる方もいると思いますが、伝統工法の良さを活かすために、ガチガチの固い壁にしないという方針は変わりません。構造の専門家の方に聞いたところ、大地震が来たとき、多少壊れる壁が良いと言っておりました。一点に力が集中しないことが大事ということですね。伝統工法に関して、私も随分と偉そうなことを言うようになりました。ちなみに、一部、トタンの波板が見えるのは気のせいです。

二階へは、この鉄製の階段を使って登ります。古民家のなかに、こんなゴツイ存在のものが、デザイン的にどう納まっていくのか、楽しみです。実はこの階段、建築物の構造上の制限により、まっすぐに伸ばすことができません。当初の設計とは異なり、階段の途中にロフトのような踊り場を設け、さらに回廊のようにL字の通路をつくり、二階の吹き抜けの空間を通って、二階の休憩室に行くことができます。言葉で説明するのは限界がありますので、後の写真でご覧ください。

階段の色ですが、このままでもカッコいい気がしてきました。


明石 博之

[組織] グリーンノートレーベル(株)
[役職] 代表取締役
[職業]場ヅクル・プロデューサー

1971年広島県尾道市(旧因島市)生まれ。多摩美術大学でプロダクトデザインを学ぶ。大学を卒業後、まちづくりコンサル会社に入社。全国各地を飛び回るうちに自らがローカルプレイヤーになることに憧れ、2010年に妻の故郷である富山県へ移住。漁師町で出会った古民家をカフェにリノベした経験をキッカケに秘密基地的な「場」をつくるおもしろさに目覚める。その後〈マチザイノオト〉プロジェクトを立ち上げ、まちの価値を拡大する「場」のプロデュース・空間デザインを仕事の軸として、富山のまちづくりに取り組んでいる。

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