オフィスma.ba.lab.の裏で、ウキウキする工事現場

絶賛リノベーション工事中の現場。ここは事務所のすぐ裏です。事務所でデスクワークをしていても、現場が気になって気になって仕方ありません。極端に近いのも、ある意味困りものです。

同時進行中の<きよた旅館さん>は、富山市に行くついでがあれば、必ず現場を見に行きます。いや、本音はちがう!見に行きたいから用事を作っていると言っても過言ではありません。リノベ現場は中毒性があります。

昨年末にオープンした<Bridge Bar>はというと、現場まで自転車で3分、歩いても10分程度でした。この絶妙な距離も、僕を悩ませてくれました。近いのは嬉しい悩みですが、遠いのは苦悩です。だから、県外の現場のお仕事など、とてもとても考えられません。

話が前に進みませんね。すみません、こちらは2軒あるうちの1軒で、コードネーム「B棟」です。建物全体が築90以上と思われますが、この吹抜け部分がもっとも古く、多分100年くらい経っているのではないかと推測できます。小さな民家に不釣り合いなほど立派な梁を、ぜひ見てもらいたいと思うので、屋根裏で断熱をして、梁を露出します。

先ほどの吹抜け空間から見上げてみると、2階のフロアがあります。ここは客室(ベッドルーム)になります。こちらは、天井の梁をチラ見せするようにします。これは大工さんのアイデアです。いつもアグレッシブに提案してくれるのでありがたいです。

ここでウンチクを少し。宿とは、リノベーション工事にとって特別な扱いが必要な建物なのです。飲食店よりも清潔感が必要なので、ついつい「フツー」な空間になってしまいがちです。これはある程度仕方ないこと。しかし、そこで諦めたらダメなんです。ボロボロの梁や柱を魅力と見せることができるか、単に古くて汚い存在に見せてしまうかは、まさに腕の見せ所なのです。プロジェクトチームが、そういった価値観を共有できていないと、チグハグでダサい空間になってしまいます。

こちら、ジャストサイズのまさに「坪庭」です。以前は洗濯機とか置いてあったランドリー空間でしたが、ゾーニング計画の時点で、この空間に救われました。この空間があるのと、ないのとでは、宿のコンセプトが違ってきます。ありがとう、坪庭。ここを町家づくりの醍醐味を感じる場所として演出してみようと思います。

ちなみに、このすぐ裏が<オフィスma.ba.lab.>です。そして、ここに土台をつくって、見えない位置にエアコン室外機を置くというアクロバティックなチャレンジもする予定です。町家はいつも、エアコン問題との戦いです。

お隣のコードネーム「A棟」に移動します。こちらはコンクリ土間の部屋があります。グループで泊まって、料理もつくって、ワイワイやってほしいと思っています。A棟は、B棟よりも若干新しく、と言っても築90年は間違いないですが、比較的柱や壁がキレイでそのまま露出して使えます。根太が見える天井も可能な限り見せていこうと思います。ちょうどこのタイミングは、配管、配線を仕込中なので、至る所でカオスな光景を見かけます。

申し遅れましたが、今回のプロジェクトチームです。設計は<濱田修建築研究所>です。施工は<大野創建>です。建築士の濱田さんとご一緒するのは、これで3回目、お互いのクセもわかっているのではないかと思います。大工の大野さんとは初めてのお仕事です。いつもいつも、良い人たちと仕事が出来て嬉しいです。お世辞じゃないっすよ。

2階に上がってきました。A棟は4名泊まれます。小さな部屋で区切られていますが、快適な夜を過ごしてもらうために、素材や照明などに拘るつもりです。予算の都合で、既存のアルミサッシを使う箇所もあります。断熱性能は下がりますが、すべてがパッキパキのサッシになってしまうのもどうかと思います。昭和の型ガラスや、枠の細いアルミサッシも楽しんでもらえる世界観をつくりたいですね。

こちらは2人部屋の小屋組みです。Bridge Barで発見したのと同じような梁です。ちょうど内川に面した建物にあったという点も一緒です。梁に点々のような跡。リズミカルな模様に見えますが、何かで薄く削ったような感じです。何人もの大工さんに聞いてみても理由がわかりません。こうする合理性はあるのでしょうか??

この部屋にも大々的な屋根裏の断熱をします。梁を出す代わりに、隅から隅までしっかりと隙間をつくらないようにしないと、寝ていたら虫が上から落ちてくる、、、という悲惨なことになりますから。僕自身もそんな思いをしたくないので。

この写真は、2019年1月21日に撮影したもの。当日は雪が降っていたんですね。今年は、ほとんど雪が降らなかったですね。そのお陰で工事にも大きな影響はありませんでした。でも、北陸の冬を楽しんでもらうためには、やっぱり雪はある程度降ってもらいたいものです。雪国が好きだと言い張っていた僕も、今では「雪が降らないでほしい」という気持ちが強くなっていました。しかし、この宿に泊まりに来る人のことを思うと、雪が降りしきる漁師町の風景を楽しんでもらいたいと思うのです。でも、去年のような大雪はこりごりです。都合の良い人間です、まったく。


明石 博之

[組織] グリーンノートレーベル(株)
[役職] 代表取締役
[職業]場ヅクル・プロデューサー

1971年広島県尾道市(旧因島市)生まれ。多摩美術大学でプロダクトデザインを学ぶ。大学を卒業後、まちづくりコンサル会社に入社。全国各地を飛び回るうちに自らがローカルプレイヤーになることに憧れ、2010年に妻の故郷である富山県へ移住。漁師町で出会った古民家をカフェにリノベした経験をキッカケに秘密基地的な「場」をつくるおもしろさに目覚める。その後〈マチザイノオト〉プロジェクトを立ち上げ、まちの価値を拡大する「場」のプロデュース・空間デザインを仕事の軸として、富山のまちづくりに取り組んでいる。

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