「世間デザインする古民家オフィス」のキオク
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町家ならでは、あこがれの中庭write 明石 博之
そうです。あこがれなのです。通り土間があって、うち蔵があって、母屋の先には小さな中庭がある、それが町家ならではの贅沢空間なのです。母屋の二階から中庭をはさんで蔵を覆う建屋が見える、こういう景色もなかなかのもんです。
ただ、気になるのは棟瓦が途中で切れていること。あきらかにデザインが異なります。工事の途中に何か新しい発見があるか、期待したいところであります。
こう見ますと、いざとなれば屋根伝いにお隣のお家へ行けちゃうという想像が湧いてくるのですが、この地で育った子ども達は、一度はそういった冒険をしたに違いありません。こちらは一階の様子です。中庭からやさしい光が畳の間に降りそそいでいます。見ているだけで癒されます。そう感じるのは日本人だけなのでしょうか…。ちなみにこの場所は、事務所の社長室となります。ほんわかしていて、仕事がはかどるのか心配になるくらい。さて、この風景もこれで見納めとなります。
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古民家のリノベは、気心の知れた仲間がいいwrite 明石 博之
今回のプロジェクトチームは、uchikawa六角と同じく、設計は濱田修建築研究所(富山市)さん、工事は藤井工業(南砺市)さん、そして、プロデュースは地域交流センター企画というメンバーです。建築家の濱田さんは、言語化できない僕らのイメージを上手に図面として表現してくれます。藤井社長はというと、どうしてもこうしたいんです!という無理なお願いをいつもいつも「それは面白そう、やってみましょう!」と聞いてくれます。面倒くさいことも、嫌な顔せず、どうやったら出来るか、すぐに検討をはじめてくれます。これがプロの仕事なんだなと、六角堂の工事の時と同様、感心というより感動してしまいます。
写真は、藤井工業の藤井社長と、頼もしく腕組みをしている藤井社長の真似をする、ワールドリーデザインの明石あおいさん、です。
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蔵の床下に砂浜?!write 明石 博之
ここは、ワールドリーデザインの新しい事務所となる新湊の町家のなかにある蔵です。
この床下に、世にも奇妙な光景が広がっていることを、誰が想像できたでしょうか…。
一見すると、ごく普通の蔵(都会もんにとっては、「普通の蔵」という概念は存在しませんが)の風景ですが、床の下には新湊ならでは特徴がありました。その床の板をめくってみて、出てきたのがコレ!!
海岸や河川敷にあるような砂です。これを見たとき、関係者一同、ポカーンという感じでした。いくつもの蔵を見てきた工務店の社長も理解不能です。設計サイドから見ても、床に砂を敷き詰める建築的な合理性はないとのこと。触ってみると、サラサラしてほとんど水分のない状態です。ちなみに根太はしっかりしていますが、その下にある大引の一部は腐っているものもあります。そこで気になるのは、束と礎石の関係です。これは掘ってみないとわかりません。
たしかに、昔は海側の岸壁がなかったので、砂浜まで目と鼻の先だったはずです。
しかし、なぜ、わざわざ砂を敷き詰めたんでしょう…。不思議です。次に気になるのは、じゃ、周辺の他の蔵はどうなっているか、ということです。この辺りの古い町家は、ほとんどが海運業か、漁師を営んでいた家です。内川沿いの渡辺家のように、古くから北前船の廻船問屋として栄えた家もあれば、その後の漁師町として発展した時代の網元や漁師の家もある。
髙木家も、その昔は漁業を営んでいたとすれば、この蔵はもともと漁具の倉庫のはずです。まだ、調査不足で確かなことはわかりません。
漁業と、この「蔵の中の砂浜」は何か関係があるのでしょうか。まったくの謎です…。元お米屋さん、髙木家のキオク(世間デザインする古民家オフィス)write 明石 博之
表の通りに面した玄関から、裏手の内川に続く扉まで、ずうっと一本でつながっている細長い廊下。測ってみると、約30メートルありました。その昔、この廊下は奥の水廻りまでつづく通り土間でした。昔の家はもれなく汲み取り式の便所でした。お隣のぴったりくっ付いた町家はどうしていたかと言うと、この通り土間が汲み取り通路でもあったのです。右に見える窓は、小さな中庭で、細長い町家ならではの明かり取りでもあります。階段はかつて増築した二階部分へとつながっています。ちなみに、この町家は、二階へ上がる階段が3つもあって、そのどの二階部分も行き来ができません。こういうところが「基地」っぽくてたまりません(笑)で、ここは、昔、髙木さんが米屋を営んでいた店舗だった部分で、お家を譲るときには、クルマが1台入る車庫になっていました。実は、古い町家が空き家になっていく原因の1つが駐車場問題なのです。新湊は古い住宅が密集したまちですから、こうゆう具合に、玄関を改造した車庫になっている町家を多く見かけます。しかし、そのまますぐ住めるくらい、本当にきれいなお家です。残念ながら、お米屋を営んでいたキオクは残っていないのですが、その辺りはご主人と一緒に、呑みながら聞くといたしましょう。- «
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